『次は、町づくりセンター前。町づくりセンター前』
運転手さんの声を聞き、降車ボタンを押した。

停留所に降りてから徒歩10分。彼の実家に着いた。
ピンポーン。
『はい』
「藤川和彩です」
『あら、和彩ちゃん。今開けるわね』
家の中からバタバタという音が聞こえ、ドアが開いた。中からは、彼のお母さんが出てきた。
「いらっしゃい。今年もありがとうね」
「いえいえ。私こそ、ありがとうございます」
お母さんに連れられて、リビングに向かう。
ドアを開けて真っ先に見えるのは、可愛い女の子の写真が飾られた仏壇。
「紗南(さな)、和彩ちゃん来てくれたわよ。良かったわね」
私は仏壇の前に座り、お線香をあげる。目を瞑って手を合わせ、心の中で紗南に呼びかける。
紗南。紗南が亡くなってから5年経ったね。沙都(さと)はどこにいるのかな。紗南、見つけたらちゃんと教えてね。
ゆっくり目を開けて、立ち上がる。
「お母さん、沙都から連絡はありましたか?」