正門で靴を履き替えると、正門前にタクシーが止まっているのに気が付いた。
「先輩、あのタクシー……」
「ああ。そっか、和彩知らないもんね。うちのお父さんタクシー会社経営してて、よくタダでのらせてくれるの」
タクシー会社の経営……。もう全部がぼんやりしてしまって、何も考えることすら出来なかった。
「ほら、乗って乗って」
言われるがままタクシーに乗り込んだ。
それ以降は、もう殆ど覚えていない。住所を告げた所までは記憶しているけれど、どうやって自分の部屋にたどり着いたのかは分からない。
気が付いたら、私は部屋のベッドでパジャマを着て横になっていた。身体を起こすと、もうお昼過ぎだった。