さて、どう声をかけようか。
危ない人だって思われたくないし見切り発車すぎる私……
でも、今、猛烈に胸が熱いのよ。



まだYouTubeに夢中な彼女たち。
ポスターの近くに立っているのに一向に気が付かない。
深く帽子をかぶり聞こえるボリュームの声で。



「ないわ〜このポスター、古いし」



チラッと彼女たちがこっちを見たような気配を感じながら続けて大きな独り言を言う私はもう充分に危ない人だ。



「その歌もファルセットがね〜たまにブレてんだよな〜よく聴くと」



完全に危ない人かと思われたかシカトが続く。



「槙田芹、好きなんだ?」



帽子で顔を隠したまま彼女に向かって聞く。



「はい、好きです!」と元気良く彼女は答えてくれる。



「へ〜そうなんだ、会えるといいね」



そう言ったら彼女は顔を上げて真っ直ぐ私の方を見た。
「え?えっ……ウソ?」ってもうバレた?
思わずポスターの方へ体を向け背中を見せる。



「ヤバ……」とだけ聞こえてきた。
一緒に居た男の子たちに何か言ってる。
「え?違うだろ」とか「こんなとこ居るわけないじゃん」とか口々に言われて。