「え?なに?会ったら歌ってほしいの?」



「一度でいいから生歌を聴きたいんだよ。勇気と希望を注入してもらいたい。あの声本当羨ましい……今度いつ歌アップするんだろ?」



「毎日チェックしてんだろ?本業が歯科医じゃね〜忙しいんじゃない?って、お前また泣いてんのかよ」



「だって……何回聴いても胸えぐられるもん……っ」



背中越しに聞こえる見ず知らずの若い子たちの会話。
胸えぐられてるの私だよ。
その表現の仕方笑えるけどね。
えぐられるって………



まだ日没まで時間はある。
明るいから、余裕があるから気を大きくしたんじゃない。
私の存在意義がそこにあるなら、私こそ伝えなければならない事がたくさんある気がして。



こんな私でも誰かの人生を左右していたなんて恐れ多いけど、支え合う事が今出来るなら……私はそれに応じたいと思った。
私に出来る全てをこの場所で。



体が勝手に動いたとでも言おうか。
見えない力に背中を押されたとでも言うべきか。
突き動かされるまま私は彼女たちの元へ歩いて行く。