記念写真を撮って握手して、もみくちゃになりながら大学を後にする。
思った以上に納得の出来るセミナーになったかな。
帰りの車の中で先生にも太鼓判を押していただきました。



「また頼むわ」ってしれっと言わないでください。
母校だけで勘弁してください。



「本当にご馳走せんでいいんか?」と駅に向かう途中で聞かれる。
泊まる予定はないし少し早いけど家に帰りたいのが本音。
家族の居る空間に戻りたい。



「先生が今度こっちに来た時にご馳走してください」



「任せとけ、美味い肉食わしてやる」



「言いましたね?約束ですよ?」



車を降りてロータリーを歩く。
ふと見上げると忘れてた悪夢が蘇る。
しまった、あのポスター撤去するように先生に念押しするのすっかり忘れてた。
恥ずかしすぎる。



ほら、若い子たちが見てるじゃん。
あれ?軽音楽部の子たちかな?
ギターケース背負ってる。
女の子1人と男の子2人。
やめて〜あまりポスター見ないで。



「お前毎日それ見てるよな」と男の子が女の子に向かってそう言った。



「会いたいなぁ」



ポツリと言った女の子の一言に歩いていた足が止まる。
ちょうどバス停の前。
彼女たちには背を向けたまま、バスを待つフリをして耳を傾ける。
普通なら通り過ぎていただろうに。
女の子の一言が何だかスッと耳に届いて止まってしまった。