シェリルを抱き上げているのに、普通と変わらない足取りでレオンは部屋を出ると玄関に向かう。


玄関まで行くのは初めてだった。


薄暗い廊下を抜けると、圧倒されるほど広いホールに出た。


そこにいたダーモッドが玄関の大きな扉を開けた。


暗がりに人が立っているとは思ってもいなかったシェリルはビクッとした。


「何をそんなに怖がっている?」


「怖がっていません……」


少し面白がる口調にシェリルは安堵した。


街へ出かけようと行ったあと、一言も話していなかったせいだ。


アメリアにドレスアップしてもらったのだが、紳士的にお世辞の一つも言ってくれなかった。


少しさびしい気もする。やはり自分はレオンと歩いていた女性のようにはきれいになれないのだろうか……。


がっかりしているシェリルは、レオンは笑みを浮かべていることに気づかなかった。