「寒くないか?」


レオンは腕の中にいるシェリルを見る。その瞳はダーモッドやアメリアが見たことがないくらい優しい眼差しだ。


「はい」


そう答えるシェリルの鼻は赤くなっていた。


吐く息は白い。


零度を下回る気温。防寒コートを着た人間でもぶるぶる震えるほどの寒さだろう。


ヴァンパイアのレオンにとって、この寒さは心地良いものだった。


暑い夏はかえって苦手だ。幸いこの国に暑い夏はないのだが。


腕の中の少女は夜空を仰ぎ、じっと輝く月を見ていた。


その月に照らされて淡いブロンドが光っている。