少女を腕の中に抱いた青年はゆっくりと馬車へと向かった。


あまりの少女の軽さに、本当に人間なのかと歩きながら顔を覗き込む。


しかし人間であることは間違いない。少女から芳醇な血の香りが漂ってくる。


青年の後を少年は急ぎ足で付いて行く。



月が美しい夜だった。



美しく見える分、空気はキーンと冷たく、腕に抱いた少女もひどく冷たかった。