「こんばんは。カサンドラさん」


ティナは知っている顔を見て笑顔になった。


カサンドラに血を吸われそうになったことはティナの記憶にはなかった。


カサンドラに笑顔を向けたティナを見たダーモッドは下唇を噛んだ。


「レオン様、今日ここへ来ている皆さんはティナさんのことばかり話していますわ」


「ほう、どんな?」


レオンが葡萄酒のグラスを美しい指でもてあそびながら聞く。


「ご存知でしょう?ティナさんの血の香りはヴァンパイアには堪りませんもの。それにティナさんは可愛らしい方だから。女性たちはがっかりしていますわ」


また血の香りの話……。


ティナは自分の血がそんな匂いを放っているとは思えない。


もしそうだとしたらレオンはどうして我慢が出来るの?


実際、レオンがヴァンパイアだということを疑ってしまうくらいなのだ。


それくらい、レオンは人間に見える。