ティナは魅入られたようにうつろな表情でカサンドラを見つめる。


「わたくしも貴方の血を吟味(ぎんみ)させて」


カサンドラのほっそりした指が、ティナの髪をうなじが見えるようにゆっくり払う。


「レオン様は歩けない貴方にすぐにあきるわ」


そう言ってカサンドラが顔を近づけようとしたその時、ダーモッドがカサンドラを強く押した。


ダーモッドに押されてキッと振り返る。


「ティナに触るな!」


ダーモッドは車イスを押して、カサンドラから距離を置く。


ダーモッドのおかげで、ティナは金縛りが解けたみたいに身体が楽になった。


「本気に取らないで。冗談よ?」


すっと立ち上がりふたりに微笑みかけるカサンドラの瞳はエメラルドグリーンに戻っていた。