「名前がないのは困ったな」


「……」


少女は名前なんてどうでも良かった。


なぜ何も覚えていないのか。


どうしてこの場所にいるのか?


これからどうすればよいのか……。


それだけが不安だった。


「私が名前をつけてもいいかい?」


長い指が少女の柔らかな髪に触れる。


触れても今度は逃げなかった。


少女は空色の瞳でレオンを見ると、静かに頷いた。