「元気になったな」


レオンの声はごく小さいものだったので、呟きは少女には聞こえなかったようだ。


ガタガタと震えている少女が哀れになった。


「何もしない。そう警戒しないでくれないか」


目の前の青年はそう言うが、自分の胸に触れていたのは事実。


そう言われても、少女は身を縮こまらせたまま震えていた。


レオンが少女の気持ちを操るのは簡単だ。


だが、なぜかしたくなかった。


子ウサギのように震えている少女をなつかせたくなった。


100年前のあの愛しい人に……どこか似た少女を。