「……わからない……」


「わからない?」


コクッと頭を動かすと、淡いブロンドの髪が揺れた。


「どこに住んでいる?」


「わからない……」


少女は自分のことを、何もわかっていなかった。


そんな自分が怖くなる。


がたがたと身体が震えだし、膝の上に置かれていたトレーは床の上に派手な音をたてて落ちた。


「あ……」


その音にビクッとした少女はポロポロと泣き始めた。


「何をそんなに怖がる? 私は君に何もしない」


「自分が……こわい……」


少女の瞳に恐怖の色が見えた。