居間には暖炉が赤く燃えていた。


この暖炉は今まで使ったのははるか昔のこと。


レオンが寒さを感じても温まる必要なかった。


今、暖炉の中の薪がはぜているのはシェリルのためだ。


「レオン様」


シェリルは車イスで自由に屋敷内を動くことをやっと許されたばかりだ。


「様はいらないと言っただろう?」


「でも……」


目の前の人は「様」を付けるのがふさわしい。


呼び捨てにするのは恥ずかしが、つい、レオン様と言ってしまうのだ。


「レオンと呼べ」


「……はい。レ、レオン」


ぎこちない言葉がシェリルの口から出ると、レオンは楽しそうに笑った。