「まだ手もつけていないだなんて……珍しいこともあるもんだね?」


エミリはシェリルに聞こえないようにレオンの耳元で囁いた。


「いったい何の用だ?」


悪びれないエミリオをレオンは鋭い視線で睨みつける。


レオンの不機嫌な様子に、シェリルはここに居てはいけない気がした。


出て行こうと、両手を両脇の車輪に伸ばし動かそうとした。


「どうした?」


レオンが車イスの手持ちを掴む。


「あ、あの、アメリアに……」


最近、アメリアに懐いたシェリルは、レオンを頼るよりも彼女に頼む方が多くなった。