「失礼、姫君。俺はエミリオ・デザリーネ。レオンとは……古くからの友人です」


エミリオの手が優雅にシェリルの目の前に差し出され、華奢な手を壊れ物でも扱うかのように手に取る。


握手されるのかと思えば、手の甲に口づけられシェリルは驚き急いで手を引こうとした。


だが、思いもよらぬ強い力にシェリルは驚く。


エミリオはシェリルの手を離したくなかった。


シェリルから香る、甘くそそるような血の香りが鼻につき、その手首に牙をたてたくなった。


「あ、あのっ……」


やっとのことで手を引く。


シェリルの顔は真っ赤に染まっていた。


エミリオは自制心をかき集め、顔を上げるとにっこり微笑む。


「失礼。まだ何も知らない姫君なんだね?」


エミリオは戸惑う少女に謝った。