「やめるんだ。体力が無くなるだけだ」


青年は優雅な所作で立ち上がると、足音もなくベッドに近づいてきた。


「い、いやっ! こないでっ」


瞳は怯えたように大きく見開き、震えながら少女は大きくかぶりを振りながら叫ぶ。


「何を怖がっている?」


ベッドの側に立った青年が少女の頬にそっと触れると、動きが止まった。


「君はなぜあの場所にいた?」


眠っている間に少女の記憶をたどってみたが、まったくわからなかった。雲がかかったように白く、何も読み取れなかった。こんなことは珍しいことだ。


「わから……ない……」


ゆっくり呟くように言うと、瞼が下りすーっと引き込まれるように少女は眠りに落ちた。