帰り、偶然ひとりで歩く茉優を見つけたから話しかけてみた。


「2パーセントだったの?」


茉優がドキッとするように、耳元で、囁くように。

思い通り、びくっと肩をすくめた茉優は俺を見て安心したように笑った。


「なんだ、要か。びっくりしたじゃん。」


「話しませんか?どうして井伊直弼に動揺するんですか。」


メガネを外す。

再びびくっとする茉優の手首を掴んだ。

沈黙が流れる。


「元カレが、直(ナオ)っていう名前で。直すけって呼ばれてたの。

外面だけは良かったけど、狂ってた。

言葉の暴力。

死ねって何回言われたかな。

電話で死ねって叫ばれたり、呼び出されて彼の家行ったり、でも別れようとはしなくて。

全部私が悪いんだからお詫びしろって。

謝るんじゃダメなんだって、何かしろって、

誰にも言えなくて、死にそうになった。

本気で死ねって言われたら死にたくなるよ。

ましてや好きな人から言われたら狂うよ

自分が全部悪かったのか、自分になんて生きてる価値ないのかなんて思ってしまうよ

そんなこと、絶対にないのに。

相性が悪かったとか、たったそれだけの問題。

命を奪うなんて、誰にもそんな権利無い。

その命に支えられて何人の人が生きてるの?

その命を産むために何人が頑張って、

その命に何人が喜んだか、絶対分かってない。

絶対言っちゃダメな言葉。命は、そんな軽いものじゃないのに。

元カレの名前を聞くと、蘇ってくるの!!

あの日々が!!!!」