見ちゃいけない。
絶対に見ちゃいけない。
私の中の危険信号が、激しく点滅している。
きっと、この黒いビニール袋の中には【歪(いびつ)】なものが潜んでいる。
見たら最後、私をどこまでも深い闇の底へと引きずり込むだろう。
だから見ちゃいけない。
「お前の大事な大事な南くんからのプレゼント、見ねーの?」
裕也は面白がっている。
南くんから預かってきた【証拠】を、乱暴に放り投げて、それを確認する私を舌舐めずりして待ち構えているんだ。
思い通りにさせちゃいけない。
それなのに私は、私の指先は、袋の持ち手に伸びていた。
サッカーを辞めると口では証明できないのなら、一体なにが入っているというのか?
見極めたいという気持ちと、今にもこの理科室から、裕也が支配する世界から逃げ出したいという、相反する気持ちに挟まれ__。
スーッと涙がこぼれた。
「また泣くのか?せめて中を覗いてからにしろよ」
涙が数滴、ビニール袋に落ちていく。
小刻みに震える手で、私は袋の持ち手に指をかけた。
重いわけでも、軽いわけでもない、なんとも言い難い感触。
その時、重みが偏(かたよ)って、袋が手から落ちた。
中身が、外に転がる__。