そんな__。
サッカーは、南くんにとって特別なもの。それを私なんかの為に辞めるなんて、それだけはダメだ。
「なに辛そうな顔してんの?」
「それは__」
「あいつはサッカーよりお前を選んだのに。もっと喜べば?」
意地悪く裕也が言うが、それじゃ別れてくれるのか?
私のことを解放してくれるの?
「でもさ、口約束だけじゃ意味ないだろ?」
さらに意地悪く、唇の端がつりあがる。
とても、私を籠から出してくれるとは思えない、底意地の悪い微笑み。
そもそも、南くんと話し合ってもし別れる気があるのなら、どうして今、目の前に裕也が居るのか?
そして南くんは、どこに行ったのか?
「サッカー辞めるって口で言うだけじゃさ、俺も信じられないし。そんな軽い気持ちじゃ、渚もあいつのところに行けないだろ?」
裕也の喋る、一字一句に心臓の針が振り切れそうになる。
一体、どういうこと?
やっぱり別れるつもりがあるのか?
「だから俺さ、証拠を見せろって言ったんだよね」
「__証拠?」
「そうそう、サッカーを2度とやらないって証拠」
そう言って、裕也がなにかを投げた。
私の足元に、黒いビニール袋が転がる。