「あいつは俺なんかと違って、真面目にサッカーやってんだよ。俺が辞めた後は、あいつがキャプテンやってて、サッカーで推薦されるくらいでさ」


裕也によって語られる南くんは、私がよく知っている彼だった。


理科室でいつも、嬉しそうに話してくれたからだ。


小さい頃からサッカーをやってて、将来は海外でプレーするのが夢。


でもどんどん体が大きくなって、バスケやバレーに転向しようと思った時期もあったが、やっぱりサッカーが好きで、それならキーパーでみんなを守ることに徹することにした。


影ながら支える役目が、自分に合ってるんだ。


少し照れ臭そうに言う南くんの笑顔が、脳裏に色濃く浮かび上がってくる。


「だから俺、言ってやったよ。サッカーを取るか、渚を取るかって」


「なんで__そんなこと?」


「当たり前だろ?サッカー命ってやつの本気を見ないと、俺も渚とは別れられない。で、あいつなんて言ったと思う?」


裕也が私に問いかける。


私には分からない。


私なんかに、南くんからサッカーを取り上げる価値はない。だから、見捨てても当然。いや、そうしてほしい。


私なんかの為に__。


「サッカー、辞めるってよ」