南くんの名前を出した瞬間、裕也の顔が険しくなった。


禁句という名の地雷。


私はずっと、地雷に触れていたんだ。


爆発すれば、なにもかも木っ端微塵になる【幸せ】を踏みしめていた。


今、そこから私は足を上げようとしている。


「随分と仲が良いみたいじゃないか?俺が居ない間に。俺が風邪を引いて弱っている間に」


「でもそれは仮病じゃ__?」


「本当に具合が悪くなったんだよ‼︎お前が俺を裏切ってるって知ってな」


「私はなにも、なにもしてない。南くんとも、ただお喋りしてただけで。私はなにも__」


「本当か?」


「えっ?」


「本当になにもしてないのか?なにも」


その声からは、怒りは感じられなかった。


どこか哀願しているような、私のことを信じたいという気持ちが伝わってくる。


だからこそ、私は返事に詰まった。


ただお喋りしてただけ。


でも、私の気持ちは明らかに南くんに向いていた。


裕也から逃れる為だけじゃなく、純粋に南くんに惹かれ始めていた。


そのことを私自身が1番よく分かっているからこそ、裕也の質問に答えられず。


そして目をそらした。


それが答えだ。