橙輝はクロゼットの中の服を漁ると、
何着か取り出して


鏡の前に立つあたしの前にあてた。


そして満足そうに頷くと
一着あたしに差し出した。


「これがいい」


橙輝が差し出したのは、
去年百合に誕生日プレゼントで貰った
ワンピースだった。


ワンピースなんて
これ一着しか持っていない。


そもそもこういうのはあたしに似合わない。


だから着る機会なんてないと思っていたのに。


「でもこれ……」


「いいから着てみろよ。着たら呼んで」



そう言って橙輝はあたしの部屋を出て行った。


しんと静まる部屋の中で、
鏡の前の自分を見つめる。


あたしが、ワンピース?


無理よ。


似合わない。


だけど……。


迷っていてもしかたない。


思い切ってワンピースに手をかけた。


「う、うう……。なんの罰ゲームよ……」


着てみたはいいものの、
なかなか橙輝を呼びに行けずにいた。


初めてのこと過ぎてパンクしそう。


しばらくそうしていると、
コンコンとノックの音がした。


「はい!」


「まだ?」


「き、着たけど……」


恐る恐るそう言うと、
いきなりドアが開いた。


びっくりしてしりもちをつくと、
目の前に驚いた顔をした橙輝が立っていた。


「あ、悪い」


「いったいなぁ!」



ぐいっと立たせられて、鏡の前に立つ。


すると橙輝はうんと一つ頷いて
あたしを椅子に座らせた。


「何?」


「いいから黙ってろ」