そう言うと、パパはあたしの目を見た。
なんだか今日は、パパにもお母さんにも
背中を押されてばかりだ。
パパの笑顔一つで、本当に心がすっきりした。
心を開いてきている証。
橙輝があたしを
家族として受け入れてくれるなら、
あたしはやっぱり、この気持ちは
消さなきゃいけないよね。
この一週間、この程度の傷で
済んで良かったのかもしれない。
麻美さんの存在がある以上、
あたしが橙輝の妹になる以上、
あたしのこの想いが
報われることはないのだから。
それに気付けて良かったじゃない。
これ以上この想いが膨らまないよう、
あたしは頑張らないといけないよね。
そのためには、松田くんとちゃんと向き合って、
ちゃんと好きになること。
恋愛初心者なあたしが
どこまで出来るか分からないけど、
ちゃんとしなきゃ。
「電話だ」
パパが立ち上がって受話器を取る。
するとパパは困ったような顔をしながら
あたしを見た。
「松田くんって子から、梓ちゃんに」
「えっ?」
急いでパパから受話器を受け取ると、
その向こうから明るい声が聞こえてきた。
「あ、もしもし?梓?これから外出られない?」
「今から?」
「うん。ちょっと出かけない?」
「いいけど……」
「やった。迎えに行くから、準備しといて」
「分かった」
「じゃ、また後で」
「うん」