お母さんを見送って玄関まで出ると、
ちょうど二階からパパが降りてきた。
「パパ。橙輝、どうだった?」
「んー?元気そうだったよ。
何も怒ってなんかないってさ」
「そうなの?」
「ああ。そのうち機嫌も直るだろうさ」
パパはゆっくり笑うと、
リビングのソファーに座った。
「ねえ、パパ」
「ん?」
「橙輝のお姉さんのこと……なんだけど」
あたしがそう言うと、
パパの表情が急に強張った。
何故あたしがそれを知っているのか。
そう言いたげな顔だった。
やっぱりこれは聞いちゃいけないのかな。
橙輝とパパにとってはまだ、
話しづらいことなのかもしれない。
「あ、やっぱりなんでも……ない」
「橙輝に、聞いたのか」
「うん」
「だったら……」
パパはあたしの頭に手を置いて、
優しく撫でた。
そして笑って口を開いた。
「だったら何も心配することはない。
橙輝が心を開いてきてる証だから」