波乱の一週間は、
ずっと松田くんが家にいた。


特に橙輝と何を話すでもなく、
松田くんが色んなところに連れて行ってくれるもんだから、


気が紛れて良かったのかもしれない。


変化があったとすれば、
松田くんはあたしのことを


梓と呼ぶようになったこと、
そして何故か、橙輝の機嫌が


心なしか悪くなっていたことくらい。



その謎も聞けないまま、
一週間は過ぎ、


お母さんたちが帰ってくる日になった。


「ただいま~」




お母さんののん気な声と共に、扉が開いた。


「お帰り。お母さん」



玄関まで下りて行くと、
軽い荷物を持ったお母さんの後ろから、



重い荷物を持ったパパが姿を見せた。



お母さん、少しはパパの苦労も労ってあげてよ……。


「パパ、荷物持つよ」


「ああ、ありがとう。梓ちゃん。橙輝は?」


「それが、ちょっとご機嫌斜めみたい」


「えっ?どうして?」


「わからないの」



荷物をリビングで下ろして二階を見つめると、
パパは少し困ったようにため息をついて、


それからあたしの頭を撫でた。


「ちょっと顔出しに行ってくるよ」


「うん」


「梓ー。ちょっと手伝って~」


「はーい」