しばらく二人が
楽しそうに話をしているのを聞きながら、
時間を見てまたキッチンに立つ。
お鍋を出して沸騰するのを待ちながら
お野菜を切っていく。
今日はお鍋にしよう。
簡単だし、松田くんもいるし、
何より安上がりだし。
お母さん直伝のお鍋を用意していると、
松田くんが近くにいた。
気づけば橙輝はいなくて、
松田くんが椅子に座ってあたしを見ていた。
何だろう。
この人、なれなれしいっていうか、
人懐っこいっていうか。
「え、ええと。何?」
「気にしないで、続けて」
「だ、橙輝は?」
「二階で絵を描いてる」
こんな時に友達を放っておいて
何をしているのよ、あいつは。
二階を見上げて怒りのこもった視線を送ると、
松田くんがおかしそうに笑った。
「百瀬っていつも鳴海のことそういう目で見るよな!」
「えっ?」
「教室でもさあ、なんかこう、
喧嘩売るみたいな眼差しでさ」
「あ、あたしそんな顔してるの?」
「まあ、そこが可愛いんだけどな!」
可愛いなんて言われてつい顔が赤くなるのが分かる。
こんなあたしでも、一応
照れるくらいの可愛げはあるんだなぁ。
恥ずかしくなってお鍋の火を止めた。
「ご、ご飯出来たから橙輝呼んでくるね」