それは、どういう意味?


まさか松田くんは
あたしの好きな人を知っているの?


橙輝が好きだって、知っているの?


「俺さ、一週間前梓の家に行っただろ?
 初めて鳴海と兄妹になるって聞いて
 ほっとしたんだ。


 これで俺にもチャンスが巡って来たって」



松田くんはあたしを見ずに
真っすぐ見つめて話し出した。


触れそうで触れない手が気まずい。


どうしていいか分からなくて、あたしは俯いた。


「梓が鳴海を好きなのは
 入学当初からバレバレだったよ」


「そんな……」


顔を上げて否定するも、
松田くんに笑われてしまう。


そうだったの?


あたし、あの頃から橙輝を好き?


そう言われるとそうなのかもしれないと思ってしまう。


だって入学式の日、
絵を描いている橙輝に


目を奪われたのは確かだったから。


あたしはまた俯いた。



「だから鳴海に思い切って相談したんだ。
 梓が好きだって。そうしたら鳴海は
 協力してやるからって言うんだ。

 だからあの日、泊まることにした」


橙輝に言われた言葉を思い出す。


松田くんは良い人だからって、
だから付き合えば?って。


だからあたしは……松田くんを、
選んだんだよ。