〝とりあえず落ちつきなさい〟


そう言って綾花は、私に制服のポケットから取り出したティッシュを渡してくれた。



こういう時って、ティッシュじゃなくてハンカチが定番じゃないのって聞いたら、さすがにそれは汚すぎるから無理だわって、綾花ちゃん酷いぜ。



ま、まあ。
そんな事は置いといて。私から出した話だけど置いといて。



「ねえ、綾花。さっきのほんとなの?」



私がレズだってみんなが噂してるっての。
綾花の作り話じゃなくて?



眉根に皺を寄せて、私は祈る様に綾花をみる。神様仏様綾花様。



「当たり前でしょ。あんなに立花さんに猛烈アタックしてたら誰でもそう思うでしょうよ」


だけど、私の願いは呆気なく散り、ただ腕を組みながら私を睨む悪魔の様な綾花だけが残ったのだ。



うそだ。うそだうそだうそだ。絶対うそだ!そんなの絶対信じないもんね!



「てゆうか!私レズじゃねえし!!」

「いや。うんそうじゃなきゃ困る訳なんだけど、みんながそうやって思うのも仕方ないんじゃない?」

「な、なんでよ」

「思い返してみたら?今までのアンタの行動。アンタが立花さんに取った行動」



言われて、必死に記憶を巻き戻す。


────────記憶の糸を手繰り寄せて、手繰り寄せて。そういえば。