「うわ!!浮いてる!!」
「ぎゃーーー!!」
初めての海外旅行に旅立った私は、初めての飛行機に絶叫していた。
この時は、まだ知らなかった。
初めての海外旅行で、
人生最大の恋をしてしまうなんて。
12時間のフライトで4本の映画を見た。
「またフランスの映画観てるの?」
隣の席から私の選んだ映画を見て笑う。
親友の悠希は、さっきから日本の映画ばかり観ていた。
「怜、一番張り切ってるよね!」
悠希の隣から顔を出したのは、聖。
私と悠希と聖の女3人の旅…
大学の卒業旅行として選んだ旅行先は、
フランス!
しかも、パリ!
私達3人はテンション上がりっぱなしで、ほとんど寝ることなく
飛行機の中ではしゃいでいた。
お金のない私達は、超ハードスケジュールのツアー。
2泊4日という短い旅行で、私達はまた友情を深めるだろう。
「着いたーーーーー!!」
テレビでしか見たことのないフランスの大きな空港に到着し、
初めての時差を経験した。
「すっごい!!日本は朝なのに、フランスは夕方!!」
携帯の時計をフランス時間に合わせながら興奮する私に聖が言う。
「当たり前じゃん。それが海外旅行ってもんだよ!」
聖は、海外旅行に何度も行っているベテランで、今回の旅行のリーダーでもあった。
「お~シャンゼリゼー♪」
「お~シャンゼリゼー♪」
「いつも~何か~素敵な~ことがぁ~♪」
「「「あなたを待つよ~シャンゼリゼ~♪」」」
ホテルに向かうバスの中で歌う私達3人。
「ボンジュ~ル!!」
初めてのフランス人との出会い。
ホテルのボーイさんだった。
いかにもフランス人って感じのお洒落な雰囲気の人。
「お~ボンジュール!!」
大声で答えた私に悠希が突っ込む。
「フランス語は、ぼそぼそって話した方がかっこいいんだよ!」
笑い合う3人を見て、ボーイさんは微笑んだ。
「オーボアー」
何?
何それ!!
初めて聞く言葉を、とりあえず言ってみる。
「オーボア!!」
にっこりと微笑むボーイさん。
部屋の前まで来ると、聖がチップを渡した。
「メルシー!」
ボーイさんは去っていく。
これぞ、外国!!!
チップなんて初めての経験!!
「オーボアって何だろ??」
部屋に入ると、聖がガイドブックで調べてくれた。
「またねって感じみたい。オ・ルボワールって書いてある。これだよね!」
「わーいわーい覚えた!オーボアオーボア、メルシーメルシー!」
ふかふかのベッドの上で飛び上がる私。
格安ツアーの割に、ホテルは綺麗だった。
日本との違いがたくさんあって、見るもの全てが新鮮だった。
コンセントの形も、リモコンも、電話も、トイレも、お風呂も…
私は子供のように浮かれていた。
この歳まで外国に行ったことがなかった私だけど、
この歳で、「初体験」を経験できるなんてね。
「晩御飯、行こう!」
「悠希が食べたいって行ってたムール貝のお店に行こうよ!」
「今夜は、飲むぞ!!」
履いていたGパンを脱ぎ、3人ともワンピースに着替えた。
初めてのパリの街を歩く。
「今頃眠気が来たよ…」
悠希は、私の肩に体重を乗せながら歩く。
「見て!!」
聖が指差したのは、教会。
まるでお城のような美しい建物。
日本とは全く違う雰囲気の街。
見るもの全てがかっこよくて、都会的。
自転車に乗る男の人が、パンをかじっていた。
すれ違う女性が、フランスパンを持っていた。
「これぞ、パリ!!」
デジカメで写真を撮りながらキョロキョロと辺りを見回した。
9月のパリは日本よりも寒く、コートを着ている人もいた。
「明日はハードだから、いっぱい食べなきゃね。」
しっかり者の聖が、鞄からしおりを出す。
明日の予定…
ヴェルサイユ宮殿、凱旋門…
パリのお買い物。
私は、すれ違うフランスの子供の後姿をデジカメに収めた。
「あ~お腹減った!」
「ここだよね、お店!」
一歩一歩近づいていた。
運命の出逢いに―――