「ハルちゃん、おいでーー」


男の子がそう言ったら、
ハルはトコトコと男の子の足元へ向かった



「可愛い」


「でしょ、めっちゃ可愛いでしょ」


「はい」



名前も知らない、今日初めて会った人なのに
こんなに穏やかな気持ちになれたのは何故だろう



「なんでこんなとこいんの?」


ハルを撫でながら私のことを見る



「…サボりたい気分だったので」



「サボりとかすんだ、真面目そうなのに」



「そうですか?」



「あんた佐倉澪(sakura mio)でしょ?」



なんで知ってるんだろう



「なんで知ってるの?」


「有名じゃん、めっちゃ可愛いって」



え…

あ…


言葉が出ない



「あれ、なんで黙っちゃうの」


「可愛いなんて言われたの初めてだから、」


「僕は言ってないよ」



…多分、私顔すごい赤い
自意識過剰の勘違い野郎じゃん!私!

穴があったら入りたい

今その言葉がよく分かった



「顔赤すぎ」


ふっ と笑う男の子はやっぱり
とても綺麗な顔をしていた



「あ」


ハルが突然どこかへ行ってしまった


「あー、猫って気分屋」


「そうですね」


「まあ、そこがいいんだけど」



男の子は よし と言って立ち上がった


「じゃあ僕も行きます、じゃあね」



えっ


私が じゃあね という暇も与えずに
男の子は歩き始めていた


なんだか不思議な人だったなあ




私はその後、クラスを確認して学校を出た