「.....あたしは駅とは逆」
「そっかぁ...。じゃああたしとは反対方向だねぇ...」
残念、と言いながらしょんぼりする心織。
心織のこんな仕草を見たら、男達は間違いなく悩殺だわ。
だって心織、たぶん可愛い部類だし。
少し茶色くて、緩くウェーブのかかったふわふわな胸元くらいまである髪。
今まで外で遊んだことなんてないんじゃないかっていうような、白い肌。
少したれ目で大きな目。
150cmくらいの小さな身長は、男にとっては守りたくなるものなんだろう。
そんな小動物のような心織。
ちょっとうるさいけど。
きっとどこに行っても好かれてきたんだろうな。
あたしとは正反対。
喜怒哀楽の激しい心織は、たぶん親しみやすいんだと思う。
「あーむ!どしたの?ぼーっとして〜」
あたしの事を下から覗き込んでくる。
きっと普通の人なら「かわいいっ!」ってなるんだろうけど、あたしは別。
だってそもそも、何が可愛いのかわからない。
テレビとかで出てくる“可愛い”と言われる人達。
そんな人と比べると、恐らく世間的に心織は可愛いんだろう。
けどあたしにはその“可愛い”と思う感情がない。
うざいとか、うるさいとかめんどくさいとか。
そういうのはわかる。
けど、楽しいとか悲しいとかかっこいいとか。
そういうのはわからない。
あたしってたぶん、自分に都合よく生きているんだろうな。
「...別に。なんでもない。」
あたしは心織にそれだけ告げた。
だってほんとに言うことないし。
心織は校門の前で「また明日ね!」と手を振る。
「うん」
あたしは一応手を振り返す。
そんなあたしを見て、心織は花が咲いたように笑うと、あたしに背を向けて歩いていった。