ふと窓の外に目を向けると、反対側の校舎が目に入る。
あたしはそのまま視線を上にあげ、雲が少し浮かぶ青空を見上げた。
あたし、誰にも関わらないで高校生活を送るつもりだったんだけどな。
なんでか入学初日から心織に話しかけられるし。
なんでか友達になっちゃうし。
友達なんて、もう作る気なかったのに。
視線を感じて、空から反対側の校舎の屋上に視線をずらす。
...見られてる?
屋上には1人の男がいた。
制服を着てるからこの学校の生徒なのだろう。
学年を判別出来る上履きは見えない。
SHRの時間に教室にいなくていいのだろうか。
まああたしには関係のないことだけど。
なんてそんなことを思っていると、男はあたしに背を向け、校舎へと入っていった。
結局誰だったんだろう。
どうせ関わることなんてないんだろうけど。
SHRが終わると、すぐに心織が振り返った。
「愛夢!今日放課後遊ばない!?」
なんで心織はこんなにテンション高いんだろう。
あたしには絶対無理だ。
「.....やだ。」
「えー!なんでー!?」
もしかして心織は朝だけじゃなく、ずっとこのテンションだったりして。
.........それはめんどくさいな。
「...めんどくさい。」
「めんどくさい!?めんどくさいってなに!?え!?私たちJKだよ!?華のJK!!分かってる!?」
なんで遊ぶのを断っただけでこんなにうるさくなるの...。
だいたい華のJKって。
あんたは親戚のオバチャンか!
「華ではないと思うけど、JKだってことは分かってる。」
「いやそれ分かってないよ!!」
どこをどうしたらわかってないことになるんだ。
JKだってことはちゃんと理解してる。
ただ、JKだから華ってわけではないと思う。
「分かってるって。」
「いやいやいやいや!!!JKはさ、とりあえず制服で遊びに行かなきゃ!そんでミニスカで素足を見せるもんだよ!」
.....ちょっと意味がわからない。
まず制服で遊ぶって。
私服でもいいだろ。
そんでなに、ミニスカ?
制服を折るってこと?
まだ高校生活2日目なんだけど。
制服をちゃんと着てる期間1日だけ?
校則破りすぎじゃない?
素足見せるって、見せてなんの得になるの。
自分にメリットないじゃん。
「いやちょっと意味わかんないんだけど。」
「ほら分かってないじゃん!!」
え、これってみんな知ってるもの?
JKってみんなこうなの?
.............JKこわ。
高校生になった瞬間から、もう素足を見せるの?
まだ4月だよ?
寒いんだけど。
「JKについては分かったけど、絶対遊ばない。」
うん、ここは分かったことにしておこう。
じゃないと心織がずっとうるさい。
あたしの耳が壊れる。
「それ絶対分かってないやつでしょ!!.....ってそれより、絶対遊ばないって、え!?遊ぼうよー!」
「遊びません。他を当たってください。」
そろそろ本気でうざいな。
あたしは何があっても遊ばない。
遊びたくない。
必要以上に関わりたくない。
「えー!...遊んでくれないとあむちんってよぶよ?」
「どうぞ。」
もうなんとでも呼んでください。
この際あだ名なんてどうでもいい。
あたしはとにかく関わりたくないんだ。
「え、そんなに遊びたくないの!?」
ガーン、なんて言って、あからさまにショックを受けた顔をする心織。
残念だけど、そんな顔をされたってあたしの意志は揺らがない。
心織が口を開いた刹那、1限目開始の鐘が鳴った。
心織は渋々といった感じで、前を向いた。