『おい!ユウサク!!』


ナオの言葉を聞こえないふりをして走りだした。


僕は走った。


こんなに走ったのは運動会の徒競走以来というくらい走った。


ただ、学校中をチィの後ろ姿だけを捜して走り回った。


中庭の大きな花時計が見えかかった。


『…いた!!!』



そう思うと同時に僕は思わず木の陰に隠れた。


チィと男が二人で話しをしている。


『俺の女にならないか』
男は言った。


この男は学校の中でも1位2位を争うくらいのモテ男だ。


チィは特別キレイというわけではないけど、性格がよくて笑顔がとても輝いている。


少なくても僕にはそう見えていた。


チィは下をうつむき考えているようで、何か言葉を発した時、木の陰には僕の姿はなく今度はあてもなく走りだしていた。


ユウサクが隠れていた木の枝が静かに揺れていた。


その夜、流れ星を見た。


でも、星に祈る気にもなれなかった。