「で、遠藤さんの彼氏ってどんな人なの!つか、彼氏いなさそうだと思ってた!ごめんね!」
電車に乗りながら、名津美ちゃんはそう言ってきた。
割と失礼な事をさらっと言うなぁ…
とちょっと凹みながら、
「凄く頭のいい人で、身長高くて、誰にでも優しい人…かなぁ」
ひーくんのことを話せるのはなんだか嬉しかった。
「超ベタ惚れじゃんっ。今日は彼氏どしたのさ」
ベタ惚れって…
そう言われるとなんだか恥ずかしい…
「今日は塾なの、受験生だから」
「うっわ、まじ?てか年上?やば!何組の人なの?」
喋る速度が速すぎて、若干圧倒される。
「彼氏、S高でね、おんなじ学校にいないの」
「ええぇえええ!!S高?!超進学高じゃん、まーじ?!
うっわ、あそこの高校、世界違うよね。超勉強漬けですれ違いとか起きないー?」
「んー…確かに最近塾とかで会う日も少ないけど…
けど。中学の時から付き合ってるから、多分大丈夫、かなぁ」
言われてみれば、私が高校生になってから全然会う機会も無くて
メッセージも素っ気ないし、たまに休日会う時も、お家で勉強会って感じだけど
受験に一筋ってのが、ひーくんらしいから
そんなに気にならなかった。
「ふぅーん、そっかぁ、じゃあお互い信じてますー!って感じなんだね。
うらやましー。あたしもこの合コンで彼氏ゲットしよっ」
名津美ちゃんは、すごい笑顔とガッツポーズで私を見る。
なんていうか、喋ってみたらすごいフレンドリーな感じなんだなぁ。
名津美ちゃん、彼氏さんすぐ出来そう。
「てか、遠藤さ…あ、はるちゃん」
「へ?」
「名前呼んでいいよね?苗字で呼ぶのとかなんか距離感あるしー。
確かはるちゃん、あたしのこと名前で呼んでくれてるっしょ?」
「あ、うん」
「じゃ!これからよろしく〜。
ってのとさ、はるちゃん!」
名津美ちゃんの話のテンポが速すぎて、ちょいちょいついてくのに必死になる。
「これから合コンだってのに、スッピンとかないよね。可愛くしてい?」
…はい?!
「大丈夫、はるちゃん素材良さそうだし?すぐ終わるって」
「え、メイク??!」
「そそ。まぁ一応頭数って言ったけどさ。せっかくだし楽しんでけー!ってね笑」
強引に名津美ちゃんは話をトントントーンと進めて行く。
電車が目的の駅に着いてすぐ、私は名津美ちゃんにトイレへと連れ込まれた。