「久しぶりだね華苗。いや、綺蝶さん」
もう茜が何を考えてるのか分かんない
「今うち、星夜の倉庫行ってきたんだよねー」
「っ!?」
茜はふふっと笑い
「まぁーコレ見て。ほんとに笑える」
って言ってスマホを取り出し、動画を再生した
「今、星夜が助けに来てくれるのかなって期待してるでしょ?」
「…え?」
「バレバレだから。まぁーこれ見ればその気もいっきに失せるけどね」
無理やり見せられたから視線をスマホに移した
【星河side】
華苗が出てったあとなんか胸騒ぎがした
ぼーっとしてたら扉があいた
視線をそこに移すと茜が立っていた
「星河!大変なの…」
出来れば茜とは喋りたくもねぇ
でも来ていいって言っちゃったからしょうがない
みんなにも事情は話してあるからみんな黙ってる
「大変って…なにがだ?」
「見ちゃったの…」
って言ってスマホ画面を見せてきた
「っ…!!」
そこには知らない男と草むらでキスしてる華苗の写真だった
そこに写ってるのは一方的に男の方がしてるが、華苗も抵抗はしていない
裏切られたのか?
でもまだ華苗とは付き合ってない
でも姫になるって言ってくれた…
それを見た未雪が
「は?こんなの嘘に決まってんじゃん」
「なにかの間違いだ…」
「間違いなはずがない!だって証拠があるじゃない!」
「うちだって信じられないよ…」
「は?お前がそれ言うか?自分だって裏切ったくせによ!」
「その件は…ごめん。でも、うちも向こうで裏切られたの」
茜の顔は真剣だった
「馬鹿みたいだよね。自分は星河を裏切ったくせうちも裏切られてる」
茜の目には涙が浮かんでいた
「だから、華苗のやつを見た時はショックだった。ほんとだから…信じて…」
俺も1回裏切られてるから、こんな写真見せられた信じれなくなる
ついに泣き出した茜を無意識のうちに抱きしめていた
でも、『茜』をじゃない茜に『華苗』を重ねて抱きしめた
俺は、華苗を信じたい。けど、信じる勇気がない
どうしたらいいんだ?
「星河…」
見終わったうちの目には涙が浮かんでいた
「ねぇ!響也!うちの演技上手くない?裏切られたって嘘信じてるし笑」
「嘘でもひどなぁー。ちょっと傷つく…」
「響也…うちには響也だけだよ?」
なんて言って2人はいちゃついてる
唯一の希望で信じてた相手に信じてもらえなかった
最後茜を抱きしめたのは完全にうちのことを見捨てたからなのかな…
せめて未雪だけでもって思った自分がおかしかった…
誰もうちのことは信じない
「これで分かった?華苗。あんたはもう逃げられない」
「一生俺の道具として生きてくしかないんだよ」
もうこれ以上の地獄があるのかってぐらい辛すぎる
信じてよ!お願いだから助けてよ
1人じゃ何も出来ない無力なうちを…
こんなに心の中で叫んでも誰にも伝わらない
この瞬間うちは心に決めた
もう感情は完璧に捨てよう
希望も持たないようにしよう
一生こいつの道具として『無』になろう
その日からうちの目は光が灯らなく、真っ暗で死んだ目をしていた
あれから何日がたっただろう
家にも戻ってないせいか、時間が長く感じる
ずっと同じ部屋でなにもしない日があとどれくらい続くのだろう
毎日道具として使われる、最近は族のほぼ全員から道具として扱われる
いまじゃあの最強の綺蝶なんて存在しない
華雪や星夜からはきっと裏切り者だと思われてるから当然助けなんかに来ない
探しもしないだろう
華雪は総長不在だからどうしてるだろう
「ちょっとお願いがあるんだけど…」
そこにいた波瑠に言う
「なんだ?」
「華雪のみんなに手紙かきたい」
「なんでだ?」
「うちがずっとここにいると華雪は混乱するから、総長の座を渡そうかと…」
「ふっ、最悪の形で総長であろう綺蝶さんがその座を渡すとはね笑」
ちっ、こいつは普通にしてれば良い奴だとは思うけど、族や喧嘩関係になると性格がかわる
しばらくしたら紙を持ってきてくれたから、そこに内容をかき、渡した
「絶対渡してきてよ」
相変わらず無表情で言う
「ああ、まぁー行くの俺じゃねーし」
下っ端の暇な奴に渡してきてもらう
未雪…あんたはこれからも頑張るんだよ…
なんて母親かってツッコミ入れたくなるけど
もうツッコミの仕方も忘れてた…
【未雪side】
華苗がいなくなって何日たっただろう
茜に写真を見せられてから華苗は帰って来ない
何回も探しに行った。思い当たるとこ全部。
家にも帰ってきてないし、学校にも来てない
そう考えると、選択肢は3つ
1つ目は茜が言っていたことが本当で、あの男と一緒に逃げた
2つ目はどっかで拉致られてる
3つ目は…命に関わる最悪なじだい。華苗は心臓が弱いから可能性は0ではない
2つ目のやつは可能性が半々。華苗なら、拉致られても余裕で倒せる
でも、もしそれが卑怯な族でうちらや星夜の名前を上げてたら…
華苗は1人で溜め込むからそいつらの指示に従ってうちらを守るだろう
もし2つ目だとしたら、その族はBLACKSだろう
茜はBLACKSの副総長の彼女だし、あの紙の事からあの時茜が現れたのも作戦のうちだろう
けど、なんで華苗はあの男とキスしてたんだ?
そう思って茜から貰った写真を見る
じっくり見てるうちにあることに気がついた
最初は華苗が抵抗してないって思ってた
けど、それが出来ない状態だとしたら?
華苗の手は震えていて、足も後ずさってるようにも見える
そう考えてた時
「未雪さん!大変です!」
そう言って下っ端のうちの1人がやってきた、
「どうした?」
「華苗さんから手紙が!」
「っ!!」
下っ端が持ってる紙を取り上げ封筒をあける
それは華苗の字だった
【華雪のみんなへ
ごめんね。こんな手紙で…
みんなの中では裏切り者かもしれない…
でも、信じてほしいのはうちが裏切ってないってこと
今の居場所とか、事情とかは言えない
でも心配しないでね?大丈夫だから
うちはもうみんなの前に姿を現すことはなくなる
知ってると思うけど、余命宣告されてるからね笑
みんなにもう一度会う前にきっと死ぬから…
未雪もだけど…
そうゆう時にそばにいられなくてごめん
うちが今日伝えたかったのはうちは総長の座を渡そうかと思ってるから
そうなると未雪が総長になって、未雪が引退する時に乃々花が総長で、亜依が副総長になるのかな?
変な形で族抜けるけど、みんな頑張ってよ?
みんな今までありがとね
最後に
華雪はうちの1番の居場所でした
華雪はうちの1番大切な所でした
華雪のみんなで作った思い出は忘れません
未雪、乃々花、亜依、結香、花音、
ありがとう……さよなら
華苗】
「…なに、これ…」
華苗…
その手紙には涙の跡が残っていた
「ふざけんなよ…!なに勝手に…!」
ドンッと壁をける
「何事?!」
乃々花と亜依と結香と花音が走ってくる
「…みて」
うちは華苗からの手紙を見せた
4人の顔はみるみる青ざめて言った
「なんで…?」
「華苗…!どこにいるの…?!」
「っ…!」
「華苗…」
みんな口々に言葉をもらすが全部空気に消えていく
封筒からもう1枚紙が出てきた
それを開くと、中に小さなメモ用紙が挟んである
紙には【星河へ】って書いてある
メモ用紙は…?
っ!!
「華苗も考えるね。」
「未雪?なんて書いてあったの?」
それを見せるとさっきの顔がやわらいだ
「なるほど…」
「これは難しいな…」
「でも、華苗を助けるためならやるしかないっしょ」
「そうだね…それまで華苗がもつといいけど…」
なんて話してみんなの意見が固まったから星夜の倉庫に向かった
星夜の倉庫の前まで来ると、やけに静かだ
中に入るとみんなドヨーンとした空気に押しつぶされそうになっていた
「ねぇ、星河は?」
「あ、未雪さん!こんにちは!星河さんなら幹部室にいると思いますよ!」
「ありがとう」
「…あの、未雪さん。後の4人は…?」
「ああ、みんなに紹介してなかったな、
亜依、乃々花、結香、花音だ」
「亜依さんと乃々花さん、結香さんに花音さんですね!」
よろしくお願いしますって星夜の下っ端達が挨拶をするとみんなも笑顔で振舞っていた
その後上の幹部室まできた
コンコン
「星河いる?入るよ?」
ドアを開けるとみんな深刻方な顔で黙って下を向いていた
「…どうした?」
蓮夜が微笑みながら話しかけて来るけど、どこか元気がない
「…星河…。華苗から手紙がきたよ…」
「っ!!!」
ガタッと立ち上がった星河はもう必死な顔をしていた
「…これ」
ガサガサと手紙を取り出すと星河はそれを奪い取るよな勢いで取り上げた
【星河side】
未雪が倉庫に来たと思ったらいきなり
「…星河…。華苗から手紙がきたよ」
って言うから。思わず勢いよく立っちまった
でもそんなのどうでもいい
未雪が取り出した手紙らしき紙を1秒でも早く読みたくて乱暴に取り上げた
そこにはたしかに華苗の文字で内容が書かれていた
途中文字が滲んでる部分があった
泣きながら書いたんだろう
華苗は今どんな気持ちなんだろう
そう考えなから手紙に目を落とした