二人の弔いが終わった後、お祖父ちゃんもお祖母ちゃんも既に居なかった私はパパの家とは縁を切ったと言うパパの妹さんの元に来た。








伯母さんは、この家に初めて来た私に言った。







『引き取ったけど、私はあなたの世話をしない。

中学を卒業するまでは、お金をあげる。



そのあとは、勝手にして。

極力、私に関わらないで。』









おばさんは、本当に何もしなかった。




別に何かをしてほしいなんて図々しいことは考えなかったけど。






私はこの家に居るけれど、居ないもの。






だから、おばさんは関係なくリビングで毎日、毎夜の様にそれをする。








多分、相手はコロコロ変わってると思う。




興味ないから、多分だけど。







鏡の中、今写るのは偽者の私。




ブラウンのロングの髪。



真っ黒な瞳。






私は、魔法を解くようにソレを外した。






改めて写るのは、





毛先がふんわりカールしたミディアムの金髪。




ママ譲りの二重にパパ譲りのサファイアの瞳。







この色だと歩いてるだけで良くも悪くも目立っちゃうから、普段はウィッグにカラコンで外出している。








ふと、ママとパパの言葉を思いだす。





『貴女は私達の天使。』





だと。

二人にハグした私を抱き止めて言った。







「……寝よう。」







きっとまだリビングは入れないし、伯母さんがいる間はあまり自由に家を歩けない。









アラームを10時にかけて、布団に入った。









ピピピピピピピピッ!

カチッ





「っ~~!」






寝起きの頭に響く機械音で目を覚ました。







この時間は伯母さんは、仕事で家には居ないから私一人だけ。








1階に降りて、まずはお風呂に入る。







そのあとは、リビングに行って軽いご飯を作って、自由に過ごす。







テレビを見たり、バイクのカタログを見たり。








平日も休日も大抵はこんな過ごし方。





学校は、まぁ訳あって行ってない。







そして、夕方4時。




ラフな服に着替えて、ウィッグとカラコンをつけて家を出る。







ガレージに停めてあるアイリスのバイクに跨がって、出かける。









昨日と同じ道を走って約20分。






目的の場所は、コンビニ。






従業員専用のガレージにバイクを停めて、裏口からはいる。







「お疲れさまです。」






「仁那ちゃん、おっはー!

今日も可愛いね~!」






テンションの高いその人にどうも、と言いながらタイムカードをおす。







そう、ここでバイトしている。








「実夏(みか)さん。

今日って誰が入ってますか?」





制服に着替えながら、顔だけその人に向けて聞く。






「今日はね~、私と店長と仁那ちゃんだよー!」







人懐っこい笑顔で応えてくれる。





彼女はバイトの先輩で2つ年上の遠堂 実夏さん。






バイト仲間の中で一番良く話す人。






「じゃあ、先行ってるねー!」



「はい。」







パタンと閉まるスタッフルームの扉。




ここのバイトは、もう初めて2年とちょっと。




中学卒業した後、おばさんは本格的に私に関わらなくなったから、私は自分で稼ぐためにここでバイトを始めた。







でもあと少しでそれも終わり。







目標が達成されたら、ここでのバイトは意味のないものになるから。









───────────

「お疲れさまでした。」





カチャンとタイムカードをおして、店長に言う。







今は午前3時。




本当はダメなんだけど、事情を話して特別にこの時間まで入らせてもらってる。







「あ、待って、仁那ちゃん。」






裏口から出ようとする私を慌てて止める店長。







「何ですか?」







「辞めちゃうって言うの…考え直すことは出来ない?

うちとしては仁那ちゃんを手離すのは、凄く痛手なんだよね。」







そう言って、方眉を下げる店長。







「ごめんなさい。

決めてたことなんで。」







そう言うと店長は困った顔をして、そっかと呟いた。





「じゃあ。」





今度こそ外に出て、ガレージのバイクに跨がる。






そして、あの憂鬱な家へと走るのだった。







「はぁ、はぁっ、っ、はぁっ!」





「待てやぁっ!こらぁっ!」







後ろから迫り来る怒声。




必死に走る私。








このリアル鬼ごっこ。


事の発端は、数十分前に遡る。








今日もいつも通りの日を過ごしていたけど、バイトは人手が足りてると言うことで、三連休。





バイトがないとすることもない。





そんな退屈な時に行くのが、歩いて数分の繁華街だった。







スキニーのジーパンにVカットのTシャツ、上に薄手のパステルピンクのパーカーを着る。







黒のウィッグとカラコンをして、靴は黒い厚底のスニーカー。








歩いてすぐだから、バイクには乗らないで行く。








いつもフラフラと何も考えないで歩いてるだけ。








ちょっと目に止まるお店が有ったら、入ってみて、一通り見たら出て、またフラフラ歩く。







その繰り返し。








午後7時。





いつも来るときなら、普通なのに今日はなんか違った。



何か、厳つい人が多くて、いかにも治安が悪そうな。







そう言えば。



周りの人は、さっきから同じような話ばかりをしている。





『暴走』だとか『走り』だとか『D.L』だとか。






ほら、あそこの人も。





「明日、どうするぅ?

『走り』見に行っちゃうぅ?」





「えぇ~!当たり前でしょ!

だって、あの『京様』を見れるんだよぉ?!」







また『走り』の話。







意味が分からないけど、まぁ良いよね。