いつものように、朝5時に起きて歯を磨くため洗面台の前に立つ。

寝起きの顔はいつも微妙に違っているけれど近頃は、自分の顔がなんとなく疲れて見える事が多い。
顔色が悪いというか、くすんで見えるというか。
夜はなるべく早く眠る事にしている。
そうしないと日中身体が疲れてしまうのだ。
それでも顔の疲れ方が気になるのは、40歳を迎えた自分には仕方のない事なのかもしれない、とみちかは思う。

洗顔フォームを泡だてて、顔にのせるとローズとランの香りがいつものように胸いっぱいに広がった。

化粧品会社に勤める悟のお陰で、彼と結婚してからずっと高級化粧品をみちかは使っている。
研究所も大きく、技術も十分にあるその大手の会社の商品の効果を疑ったりしたことはないけれど、細胞の合成よりも老化が進んでしまうらしい年頃の自分には、どんなアンチエイジング化粧品も、若返りというよりは、なんとかくい止めてくれる事が精一杯というのは、ここのところ常々実感していた。

もう、自分は決して若くないのだ。

鏡に映る自分に自分で言い聞かせる。
それにあまりそんな事を気にしている場合ではない、と今は思う。