「あら、そうなの。うーん…、正直…。」

ひばりが苦い表情をし、小さく語尾を伸ばしながら言葉を詰まらせた。
みちかは黙ってひばりの言葉を待つ。
応え方に迷った時、相手に失礼の無いようにきちんと頭で整理をしてから口にするひばりの誠実な性格をみちかは良く知っていた。

「ルツ女を本気で狙っているのなら、お教室には行っていた方が賢明だと思う。そうね、ペーパー対策は家庭でもなんとか…、なるかなぁとは私も思うのだけど。行動観察が、あそこは結構意地悪なのよ。噂によると子供達がおふざけするような方向へわざと持っていくらしいの、先生方が。聞いたことある?」

ひばりの言葉に驚きみちかは首を横に振る。

「先生方が?わざとおふざけするように仕向けるっていう事?」

「そう。そこでね、反応を見るらしいわよ。はしゃぎたくなった時、どれだけ抑える自制心が備わっているか。ルツ女らしくて笑っちゃうけどね。それにここ数年は、急に運動能力も見るようになったみたいよ。今年、翠のお友達も何名か受けたのだけど、体操の方をあまり対策されていなかった方は残念な結果だったの。」

初めて耳にするルツ女の細かな受験情報に、みちかは息を飲んだ。