オーダーしたパスタを食べながら、しばらく同級生の話で盛り上がった。
お昼時に近づくにつれ、店内に人が増えて、時間の速さを感じながらみちかはいつまでもこうしていたいような気持ちになる。

敬栄のブラスバンド部の話題になるとひばりが眉をひそめて「今じゃ、弱小なのよ。」と教えてくれた。
ひばりの憧れだった顧問の楢崎先生が何年か前に退職されてからは、コンクールでの入賞はおろか部員も減ってしまったという。

「翠の敬栄初等部の入学式はね、高等部のオーケストラ部が演奏をしてくれたの。びっくりしたわよ。あの頃、オケ部なんて無かったじゃない?聞いたら、ブラスバンド部が衰退した代わりにアンサンブル部の人数が増えて、オケ部に変わったんですって。」

「あぁ。あるかもね。敬栄、音大の進学率意外と高いしね。」

「そうなのよね。初等部入ってみたら何かしら楽器を習っている子が多くてね。うちもどうしようかな、と思っていた頃ちょうどオケ部の定期演奏会があって。翠を連れて行ったらバイオリンに興味を持ったのよ。」

「へぇ。それでバイオリンを?」

「うん。始めてみたら楽しくて仕方ないみたい。水泳は全然ダメだったのに。」

ひばりが苦笑いをしながら言った。

「まあ、敬栄に入ることができたから中学受験も免れたし。しばらくはやりたい事を思う存分やらせればいいんじゃないって主人の意見もあってね。小学校受験対策でなかなか遊び足りなかった部分もあるし、音楽で青春してくれたらいいかなぁと思って。」

音楽で青春、のところは、照れ隠しなのか冗談ぽくひばりが言いながら笑った。

「私たちみたいにね。」

みちかもひばりの言い方を真似して笑った。