「朱里、誕生日おめでとう」
「あ…ありがとう……」
「女の子はさ、16歳になったら結婚できるんだよね」
「そう、だね」
そこで会話は止まり、私達の間には暫く沈黙が流れる。
その間もたっくんはブランコを押し続けていて、往復するたびキーッキーッと鳴る音がやけに大きく聞こえた気がした。
「朱里…俺と結婚してくれる?」
「え…?」
沈黙を破ったたっくんのその言葉は、予想外のもので思わず目を見開いた。
「予約させてほしい。俺のお嫁さんになってほしい人は朱里以外いないから」
“付き合おう”という言葉ではなく“結婚の予約をさせてほしい”という言葉にただただ驚いて…
言葉も出なかった。
だけど言葉が出ない代わりに涙がボロボロと溢れてしまって止まらない。
あの時の私は、ここでたっくんの方に振り向いて笑顔を見せることができたのに。
たまらなく嬉しいときは笑顔より先に涙が出るんだとこのとき初めて知った。