「朱里、今日はこれからずっと家にいる?」

「うん。いるよ」

「じゃあまた夜にメールするから窓開けてね」

「分かった」




別れ際のこんなやりとりだって、今まで数え切れない程してきたはずなのに。

それでも…こんなに寂しく思うのは、今日が初めてかもしれない。


すぐ隣の家にいるのに。

夜になればまた話ができるのに。

学校でもいつも近くにいるのに。

それなのに………寂しいなんて変かな?




近くにいるとドキドキするのに、苦しくなるのに。

まともに顔も見れないのに、話すのも緊張するのに。

それでも…もっともっと近付きたいと思ってしまう。



たっくんが私の全てを知りたがるように、私もたっくんの全てを知りたいんだ。

きっと、まだまだ知らないことたくさんあるはずだから。



「じゃあ、またあとでね」

「あ…待って!」



笑顔で手を振るたっくんを少し迷いながらも引き止める。ほぼ無意識の内に服の裾を引っ張っていた。