「すごいだろ?こないだ人生で初めて100点とったから持ち歩いてたんだ。俺のお守り」

「そんなに大事なものなら貰えないよ」

「いいって。また次もとればいいだけじゃん。それさ、俺の大事な女に見せたらすごい褒められちゃって。だから次も絶対満点とってやるんだ」



その答案用紙を押し付けるように俺に渡すと、諒介さんは再び自転車に乗る。




「まぁ男にも泣きたくなるときはあるよな。好きなだけ泣け。じゃあな」



そう言い残して、そのまま自転車で颯爽と去って行った諒介さんを見て思った。



テストの答案用紙で涙拭けって…どういうこと?

というより、これで拭けるの?

たしかに紙だけど…

そんなことを考えている内に、いつの間にか涙も止まっていた。




「ハハ、変な人」



これが諒介さんの第一印象だった。