「どうした?腹でも痛いのか?」



うずくまって泣いていた俺にそう声を掛けてきたのが諒介さんだった。

諒介さんは乗っていた自転車を近くに停めると、俺の隣に座る。



「いや、なんでもない」




男がこんなとこで泣いてるなんて、本当に情けなくて恥ずかしい。

そう思って必死に涙を拭うも俺の心のダメージは半端なくて、涙が止まることはない。

こんなときは一人にしてほしいのに、いつまでも俺のそばから離れない諒介さんに早くどこかに行ってほしい気持ちでいっぱいだった。



「あー…今ハンカチもティッシュも持ってないや。とりあえずこれで涙拭いとけ」



そう言って諒介さんがズボンのポケットからゴソゴソ取り出して俺に差し出したのは、なぜかテストの答案用紙。

それに視線を落とした俺に、諒介さんは誇らしげな表情を見せた。