◆◇◆拓海side◇◆◇




俺が諒介さんと初めて会ったのは、中学に入学して暫く経った頃だった。


その日の俺は…情けないことに河原でうずくまりながら泣いていた。



その頃、なぜか朱里の俺に対する態度が突然変わってしまっていたんだ。

俺を避ける…まではしないものの、近付かないように、なるべく関わらないように、そうしてるのが目に見えて分かる状態だった。



それでも俺は朱里を追い続けた。

だって好きだから。

一瞬でも目を離したら誰かに朱里をとられてしまいそうで怖かったんだ。

だから…朱里がどんなに俺から離れようとしたって御構い無しに追い掛け続けていた。



それでも、河原で涙を流してしまったあの日は…
俺が朱里から離れる覚悟を決めた日でもあった。

あの日、長年の片想いにピリオドを打つことを決めたんだ。




『たっくん、いつまでも私の心配しなくていいから。視野を広げて色んな女の子を見ないともったいないよ』




朱里が笑いながら俺に言ったこの言葉がそう決意させたから。


ショックだった。

この言葉の意味分かる?

朱里は俺が他の女を見てたって何とも思わないってこと。


俺が誰かに朱里をとられないように必死になってる時、朱里は笑顔で俺にこう告げたんだ。



俺がどんなに必死になったって、

俺がどんなに朱里を想ってたって、

朱里にとって俺はただの幼馴染みでしかない。



そのことを思い知らされるようなこの言葉に胸が張り裂けそうなほど苦しくなって、溢れてくる涙を止めることができなかった。