「やっぱり出ないか…相変わらず好き放題やる人だな」
もしかして矢吹先輩に電話してるのかな?
あの人、たっくんのこと嫌ってたみたいだから仲悪いのかと思ってたけど…携帯の番号知ってるってことは仲良いってこと?
「明日俺が諒介さんの家行って、もう二度とこんなことしないようにちゃんと言っとくから」
「で、でも…あの人なんか危ないよ。たっくんのこと嫌いだって言ってたし」
「平気だって。朱里にこんなことしたのは許せないけど、あの人すごくいい人なんだよ」
「いい人…?信じられない…」
「じゃあ明日俺と一緒に行く?直接朱里に謝ってもらわないと俺も気が済まないし」
「一緒に?」
またあの人に会うの?
正直もう二度と会いたくないくらい苦手なんだけどな…
「あの人には色んなこと教えてもらったんだ。ちょっと変なとこもあるけど優しい人だよ」
「そう、なの…?」
たしかに映画で感動して涙流してたり、私の話を楽しそうに聞いて大爆笑したりしてたけど…
優しい…?あの人が?うーん…
そんな風にお鍋のシチューをかき混ぜながら考え込んでいると、たっくんが隣から私の顔を覗き込む。