たっくんの家のキッチンで二人並んでご飯を作る。
お互いの親がいないときは、決まってこうやって一緒に料理をするのが子供の頃からの習慣になっているのだ。
こんなの、もう何度もしてるのに。
なのに今は…たっくんの隣に並んでるだけでドキドキする。
「俺が作るから朱里はソファーで寝てなよ」
「でも、相変わらずたっくんの包丁使い危なっかしすぎて見てらんない」
「ハハ、返す言葉もないね」
たっくん…いつも通りにしてくれてるけど、どうして何も聞いてこないのかな。
そんな私の思いを悟ったかのように、たっくんが口を開く。
「朱里、聞いていい?」
「え?」
「今日はユメちゃんと映画に行ってたんじゃないの?」
「あ…ユメちゃんお腹壊して来れなくなっちゃってそれで……」
「じゃあ今日誰と一緒だったの?」
「えっと…」
「知りたいんだよ。朱里の全部を」
やっぱり…たっくんはどこまでも私の全てを把握したがる。
「あの…矢吹先輩っていう人と一緒にいたの。なんかよく分からない展開で一緒に映画観ることになって…」
「矢吹…それって諒介さん?」
「え…?うん…知り合いなの?」
「まぁ…あの人とは色々あったから」
「あの人なんなの…?すごく強引で苦手だよ…」
「じゃあその首は諒介さんにやられたってこと?」
「……うん」
私の返答を聞いたたっくんは、一つため息をつくとズボンのポケットから携帯を取り出してどこかに電話し始めた。