電話が切れると、私の耳元にはツー、ツー、という音が虚しく響く。
何度も聞いたことのあるはずのその音が、今日はやけに耳障りに思えた。
「どうしよう…」
最寄り駅に着き、家へと向かう私の足取りは重い。
こんな時、きっと少し前の私なら何も考えず真っ先にたっくんに言ってたはずなんだ。
こんな最低な先輩がいてね、こんなことされたんだよって、きっと躊躇いなく言えたと思う。
でも…今の私は言えない。
たっくんには絶対こんなこと知られたくない。
だからどんな顔して帰ればいいのか分からない。
逃げるように入った近所のコンビニで時間を潰し、店内の時計を確認するともうすぐ19時。
これ以上は…無理かな。
たっくん心配してまた探し回りそうだし…
具合が悪いことにして自分の家に帰ろう。
そう決めてコンビニから出ると5分程で家に到着。
“ごめんね。体調悪くなっちゃって行けない”
灯りがついているたっくんの家を横目に、そんなメールを送信して。
そのまますぐに自分の家に入れば、胸がチクンと痛んだ。