たっくんは昔から、一度こうと決めたら止まることなく突き進む人だ。

そして、行動に移すまでが驚くほど早い。



「ええっ!?もうバイト見つけたの!?」




翌日の通学途中、通り慣れた道には私の声が響く。




「ハハ、そんなに驚くこと?」

「だって…こんなに早く見つけると思わなくて」




いつものように私の手をしっかりと握り、朝から眩しい笑顔を見せるたっくんの行動力はやっぱり昔のままだ。

いや、寧ろパワーアップしてる気もするけど…




「昨日あれからネットで求人情報見てたら、いいとこあってそこに決めたんだよ」

「そうなの?なんのお店?」

「昭栄大の最寄り駅の近くにある居酒屋。明日面接だからまだ決まったわけじゃないけどね」




待って、明日もう面接だなんて…

バイトするって聞かされたの昨日だよ?

もしそのまま決まっちゃったら、一緒にいる時間減っちゃうの分かってるのかなぁ…



「朱里?ため息なんてついてどうしたの?」

「…ううん。なんでもない」




今まで当たり前のように隣で笑っていたたっくんがどんどん私から離れていく。

そのことが寂しくて不安で…

知らず知らずの内にため息が漏れていた。

私…たっくんと離れたくないよ。