「本当にクリーニング出さなくていいの?」

「はい、平気です。もう気にしないでください」

「でも…あ、じゃあ、ここのボタン取れかかってるから付けさせて?せめてものお詫び」

「ありがとうございます。佐伯先輩って優しいですね」




朱里がニコッと微笑むと、マサトは更に赤くなる。

その顔も、仕草の全てが…完全に朱里に恋してる。



朱里は昔から誰にでも平等に優しい。

困ってる人を放っとけないし、クラスで浮いてる人がいたら率先して声を掛けるような子なんだ。

そんな朱里のことすごく好きだけど…

だからこそ卒業後離れるのが不安で憂鬱になる。

だってその優しさは時に人を救い、

時に人の心を奪うから。




「優しくするのは当然だよ。友達だもん」

「友達…」

「うん。私もたっくんもマサトくんの友達だよ」

「僕、拓海くんのことすごく尊敬してます。ああいう人になりたいって思うんです」

「なれるよ。だって、マサトくんもたっくんと同じように優しい人だから」

「そう言ってもらえて嬉しいです」




穏やかに笑い合う二人に俺の憂鬱は増していた。

マサトはきっと分かってる。

朱里を好きになっちゃいけないってこと。

分かってて葛藤しながらも…朱里を好きになってしまったんだろう。

マサトが思いっきりムカつく奴なら今すぐ排除するけど、マサトは俺にとって大事な存在でもあるわけで。

排除できない存在が朱里に恋しちゃった場合は…どうすればいい?



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